エラリー・クイーン著、中村佐千江訳
友人のトニーとクリントンの町に遊びに来たジュナは、銀行強盗の現場に出くわしてしまう。ジュナにカナダへの道を聞いた男は犯人の一味だったのだ。警察は犯人を取り逃がすが、ジュナは犯人たちは脇道に入ったのではと考える。
クイーンによる児童向けミステリシリーズ(クイーンはかなりゴーストライターも使っていたそうだが、本作はどうなのかな?)が角川つばさ文庫に登場してびっくりしていたのだが、無事続刊が出てありがたい。この調子で全巻復刊するといいなぁ。子供向けなことに加え時代背景も相まって牧歌的、とは言えミステリの楽しさは保持されている。かつ、子ども扱いされて自説を聞いてもらえない苛立ちや、子供故に大人の機微まではわからない所など、一貫して子供目線の物語である所は、正しく児童文学ぽい。ミステリのトリックはかなり単純なのだが、サスペンス要素に注力しており、当時の少年少女はハラハラしつつ読んだんじゃないかな。なお、当然クイーンが現役だった時代が舞台なのだが、作中では時代への言及がない。解説か何かで一言言及があってもいいかなと思った。馬車と自動車が普通に公道を走っているってことが、今の子供にはぴんとこないかも。電話も村に1つだけとかなんだよね。