ケベックにある、修道院が経営する寄宿学校では、校長のオーギュスティーヌ(セリーヌ・ボニアー)が音楽教育に力を入れていた。ピアノコンクールでの実績もある名門校だが、経営は苦しく、母体である修道院の総長は閉鎖を考えていた。オーギュスティーヌは生徒による音楽会を開き、マスコミを見方につけ世論を動かそうとする。監督はレア・プール。
 修道院が管理する寄宿学校といっても、当然のことながら色々な雰囲気の所があるんだなと妙に感心した。カソリックの中でも音楽なんてもっての他という派もあるが、本作の修道院では肯定的に見られている。総長はオーギュスティーヌの方針に否定的だが、宗教上の方針というよりも彼女個人が「音楽が分からない」人だし、単純に音楽教育にはお金がかかり経営を圧迫するからだ。
 オーギュスティーヌは自身もかつてはピアニストであり、音楽教育に情熱を傾けている。彼女にとっては音楽は心を乱すものではなく、人生を支えるものであり、祈りのようなものでもあるのだろう。物語の時代設定は明言されないが、ラジオで女性のピル使用の是非を問う内容が放送されているシーンがあり、価値観が大きく変わりつつあるものの、女性にとってはまだ縛りの多い時代だったことが垣間見られる。オーギュスティーヌは総長から良妻賢母を育てる教育への転換を促される(おそらくカソリック修道院としては総長の考えの方が一般的なのだろう)が、「高い理想を持てと生徒たちに言っています」とはねつける。音楽の才能がある生徒にとっては、それは彼女らの人生を精神的にも生活の手段としても支え得るものだと彼女は考えているのだ。音楽にしろ何にしろ、自分に与えられたものを使って生きる、そのために闘うという姿勢が清々しい。
 生徒たちの音楽との関係は、ピアノの才能を持ちコンクールを目指すアリス(ライサンダー・メナード)以外ではさほどクローズアップされないのだが、合唱シーンでの表情は皆とてもよかった。また、アリスと仲良くなるスザンヌ(エリザベス・トレンブレイ=ギャニオン)は吃音があるのだが、歌うときはそれが消える。音楽があることが、彼女にとっての壁を壊すのだ。おそらくアリスにとっても他の生徒たちにとっても、形は違えど同じようなものなのではないだろうか。