ボジェナ・ニェムツォヴォー著、栗栖継訳
美しい谷間で娘一家と暮らすようになったおばあさん。教育はないが、様々な知恵と温かい心と勇気を持ち、孫たちを愛し、家事に励む。おばあさんと家族、谷間の人々との交流を描く。19世紀チェコの有名な作家による、国民的文学作品だそうだ。あとがきによるとニェムツォヴォーは民族・社会解放運動の先駆者で、当時チェコを支配していたオーストリア政府から目をつけられていたそうだ。そのせいもあって非常に経済的には苦しい一生だったとか。本作にも民族主義的な要素は多く、チェコの国土への愛や、皇帝に対する素朴な敬愛等も描かれる。またおばあさんは敬虔なクリスチャンなので様々な宗教儀式、また冠婚葬祭の描写も多い。チェコの昔ながらの生活習慣や伝統、民話等を記録しておこうという意図もあったのかもしれない。教条的な部分も多いのだが、四季を通した自然の描写、生活のあれこれの描写が生き生きとしていてとても楽しい。おばあさんは自分は昔堅気だと自認しており昔のやり方であれこれやるが、若者にそれを押し付けるようなことはしない。人それぞれの生き方があると理解しており、個人を尊重しているところは意外と現代的でもあった。