ジョイス・キャロル・オール著、栩木玲子訳
金髪の少女を生贄として「とうもろこしの乙女」にしようとする少女たちを描く表題作、あかちゃんが生まれ姉になった少女とネコの秘密「私の名を知る者はいない」、強い兄と虚弱な弟の双子の相反する人生の顛末を描く「化石の兄弟」等7編を収録した著者の傑作選。
どの物語もミステリともファンタジーともつかず、不気味で不穏。登場人物の精神の不安定さ、現実と妄想が入り混じっていく様に読んでいる側も引っ張り込まれるような居心地の悪さ、怖さを感じる。しかしその妄想や不安の元にあるのは彼らの生き辛さや孤独、愛されていないという寂しさだ。それだけに、不穏さと同時に痛切な悲しみを感じ、よりやりきれない。自分の世界を強化していく為に犯罪行為に走ってしまう少女たちも、双子の兄弟の愛憎も、愛のやりばを無くして新しいパートナーとの出会いを夢見る未亡人も、皆どうかしているのに皆すさまじく孤独に見え、やりきれない。