ゴーストタウン化が進むデトロイト。妹を連れて街から逃げ出したいロッキー(ジェーン・レビ)は、恋人のマニー(ダニエル・ゾバット)と友人のアレックス(ディラン・ミネット)と組んで空き巣強盗を繰り返していた。ある老人が娘が事故死した際の多額の賠償金を隠し持っていると聞いた3人は、その老人宅に強盗に入る。老人は盲目なので、「目撃」もされないとたかを括っていた彼らを、予想外の恐怖が襲う。監督はフェデ・アルバレス。
ホラー映画は苦手なのだが、やたらと評判がいい作品なので見てみた。結果、確かに面白い!すごく面白い!見られないほど怖くはなかった(というより別のベクトルの嫌さの方が強いかな・・・)ので、ホラー苦手でも大丈夫。
 舞台はほぼ室内で動きが限られており登場人物も最小限で、とてもよく設計されているなと思う。一種の機能美みたいなものすら感じる。かちっとした理詰めの作りを好む監督なのだろうか。各種アイテムの用意の仕方、これがここにありますよーという見せ方が几帳面。わざわざ見せたものは全て伏線として回収していくので、ほんと生真面目と言えば生真面目な作風だと思う。
 予告編の通り、老人が目茶目茶強いというのが一つの怖さなわけだが、真の怖さはその先にある。そこを伏せたままにした予告編は結構良心的だった。ホラーの怖さの一つは対象が不可解である、理屈が通らないと言う所にあると思うが、本作でもそれが後半一気に加速していく。
 またホラー的な怖さというわけではないが、デトロイトの町の荒れ方、人のいなさがうすら寒い。モブを入れる製作費がなかったということなのかもしれないが、今のデトロイトは実際このくらい人気がないんだという共通認識があるってことでもあるのかな。若者3人の行動は浅はかに見える所もあるが、ろくな仕事もなく世間から取り残されているのだという背景が透けて見える。移動するには、強盗でもやって資本を手に入れるしかないのだ。一方、老人の方も若者たちとは別の意味で、社会からないがしろにされた存在だ。底辺同士が激突し食い合うという殺伐としたものがある。
殺伐と怖い作品ではあるのだが、映像の色合い、質感が予想外に美しい。特に光の使い方は効果的だと思った。物語の大半が暗い室内で展開されるので、差し込む光はより印象深い。