東京でモデルをしていた15歳の望月夏芽(小松菜奈)は、父親が故郷で旅館を継ぐことになった為、海辺の田舎町・浮雲町に引っ越してくる。がっかりする夏芽だが、地元の名士である神主一族の息子・コウこと長谷川航一朗(菅田将暉)と知り合い、彼と強く惹かれあう。原作はジョージ朝倉の同名漫画、監督は山戸結希。
私は原作未読なのだが、長編のダイジェストっぽさは否めなかったと思う。一つ一つのシーンを取り出してみると、魅力的な部分はあるのだが、全体を通した映画の駆動力みたいなものが、いまひとつ弱いという印象を受けた。今見ているシーンの次のシーンがあまり気にならない(続きをもっと見たいという気持ちが沸いてこない)のだ。そのせいか、それほど長い尺ではない(111分)のにすごく長く感じた。
 ショットのつなぎ方に不思議な癖がある。えっそこで切るの?そこで繋ぐの?という感じで、ともすると細切れになっているような印象を受けた。序盤、夏芽がコウを発見するシーンで顕著だったと思うのだが、ロングとクロースを交互に配置して決定的な出会いシーンに近づけていく。タメを作って緊張感を増していく意図があったのかもしれないが、私はこういうつなげ方だと逆に気が散ってしまう。
 この出会いのシーンはおそらくものすごく重要で、ここで強烈に惹きあうものがあり2人が恋に落ちた、ということを観客に納得させないと、その後の展開、2人の言動が茶番に見えてしまう可能性がある(実際、私は茶番ぽくて耐えられない部分がいくつかあった)。これは、ダイジェストっぽい脚本の弊害なのかもしれないが。エピソードが断片的なので、2人の関係のダイナミズムみたいなものが途切れてしまうのだ。2人の関係、そして夏芽が人生の選択をどのようにしていくかという所が本作の肝と思われるので、これは大分残念。彼女の決断の重さみたいなものが薄れてしまった。重さが薄れているままラストを見ると、茶番感がすごくてなかなかに辛かったんですよね・・・。
 もっとも、すごくいいシーンもある。フォトジェニックな椿の花を咥えるシーンや、夜のバッティングセンター。夏芽とコウの同級生で、夏芽に思いを寄せる大友役の重岡大殻が健闘している。大友は非常にテンプレないい奴系当て馬系男子キャラだが、重岡の奮闘故か、生き生きとして実体感のあるキャラクターになっている。対して、主演級の菅田は、肉体性が非常に希薄で驚いた。他作品ではそんなことないので、演出上のオーダーだと思うのだが、生々しさを極力削ぎ落している。ヒロインである小松の肉感的な存在感とは対称的だった。