東直己著
 人柄の良さで周囲から愛されていたオカマのマサコちゃんが殺された。しかし、警察の捜査は一向に動きを見せずない。若い頃に彼女の恋人だったという大物代議士が、スキャンダルを恐れて隠ぺいしようとしたのではという噂がススキノに流れ始め、ゲイコミュニティーには怯えが広がっていた。マサコちゃんの友人だった「俺」は、真相を突き止めようと動き始めるが、身辺に怪しげな男たちが現れる。『探偵はバーにいる』シリーズの4作目。映画『探偵はバーにいる2』の原作でもある。
 「俺」は口を閉ざす人たちに対して納得がいかない。おかしなことはおかしいと言い、怒るべきところでは怒るべきだというのが彼のやり方なのだろう。ただ、それは守るべきものを持たない、身ひとつだから出来ることだと思う。「俺」は苛立ちを旧知の記者・松尾にぶつけてしまう。この時の松尾の反応が強く印象に残った。松尾もゲイコミュニティーの人たちも、ススキノの住人たちも、「俺」から見たら卑怯なのかもしれないが、それを「俺」に責められる筋合いはないだろう。「俺」は松尾に諌められ一応退くものの、おそらく本当にはぴんときていない。そんな「俺」に、最後に大変な事態が起きる。「俺」はそれを引き受けられるのかどうか、続きがちょっと気になる。
 なお、80年代が舞台なのだが、やっぱりバブルだったんだなー。「俺」はさしたる収入源がなさそうなのに、今現在の「金がない」とは大分趣が違う。もし今同じような設定だったら、多分銀行口座からお金引き出せないよな。