アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ著、ヘレンハルメ美穂 羽根由訳
 レオ、フェリックス、ヴィンセントの三兄弟と幼馴染のヤスペルは、緻密な計画によって武器強奪、そして銀行強盗を企て、成功させる。彼らの間には家族としての強い絆があった。しかし同時に、レオの中には父親によって植えつけられた暴力への志向があった。一方、ストックホルム市警のブロンクス警部は銀行強盗事件の捜査を進めていた。
 家族の絆と言うと聞こえはいいが、それが「家族」を不自然にゆがめてしまうこともある。レオたちの父親は、他人を信じず暴力で他者と渡り合う生き方しか出来ない人物で、その分「家族」には絶対的な忠誠を要求する。幼かったレオたちはそれに従う他なく、そのために大きな傷を負ってしまう。そして成長してからも、父親の呪縛から逃れることができない。妻子を物理的・精神的な暴力でコントロールしようとする父親の姿は読んでいて腹立たしいし怖い。どんなにひどい親でも、子供にとっては親であり頼り愛されようとせざるを得ないというのも腹立たしいし辛い。そして、父親の支配の仕方をレオが無意識に踏襲している、父親から逃れようとしてまた出戻ってしまうことが更に怖いのだ。スリリングでとても面白いのだが、暴力による支配の連鎖は読んでいてストレスが溜まる。レオたちだけでなく、ブロンクスもまた同じような暴力にさらされてきた。生き方のどこで道が分かれてしまうのか、2人の対峙はやるせない。
 なお、本作は実話が元になっているそうだ。それだけなら珍しくはないが、著者の1人が事件の当事者というケースはかなり珍しいのでは。暴力により他者を支配しようとする言動の生々しさが際立っていた。