アン・ウォームズリー著、向井和美訳
 ジャーナリストである著者は、カナダのコリンズ・ベイ刑務所で読書会を運営するボランティア活動に誘われる。 取り上げる本は、『怒りの葡萄』『またの名をグレイス』『ガラスの城の子供たち』等、小説からノンフィクションまで幅広い。読書会の1年を追ったドキュメント。
 読書は1人でするものだが、複数でその本について話し合う読書会でなければ得られないものもある。自分と違う読み方をする人の話を聞くことで、その本についての理解がより深く広くなる。自分の思考の外側に手が届くとでも言えばいいのか。読書が直接的に囚人の更生の役に立つのかどうかは何とも言えないが、自分について、また周囲の人たちについて考えそれを言語化し整理する力はつくだろうし、それが立ち直りの手助けになったりはするのだろうと思う。実際、参加している囚人たちの中には、どんどん深い読み方をし、それを文章にしていく人たちもいる。物事を色々な方向から見るということに慣れていくのだ。
 著者に関しても同様で、自分の読み方と、囚人たち(というか自分以外の全ての人)の読み方は違うのだと折に触れて確認していく。どちらが正しいというわけではなく、どちらの読み方もできるから読書は素敵なのだろう。読書会は、様々な読み方に触れる機会なのだ。読書会の司会者が「この作品のテーマは?」と問うのはその様々さをないがしろにすることではないかと気になったが、読書に慣れてない人にとっては、ひとつのテーマがあると仮定した方が読みやすい(読んでいて納得しやすい)のかもしれない。
 人はなぜ本を読むのか、読書にどんな意義があるのかという疑問への回答となっている作品だと思う。閉塞した環境でプレイバシーも乏しい刑務所の中では、読書はある種の避難所のようなものでもある。これは刑務所の外の世界でも同じだろう。カナダの刑務所事情や囚人をめぐる社会状況が垣間見えるところも面白かった。