フェデリコ・アシャット著、村岡直子訳
 テッド・マッケイは脳腫瘍を苦に自殺を企てる。拳銃を頭にかまえた時、玄関の扉が激しく叩かれる。訪問者の男・リンチは、ある組織からテッドに依頼があると言う。その依頼内容とは、テッドと同じような自殺志願者を殺してほしいというものだった。
 テッドが奇妙な出来事にどんどん巻き込まれていく、と思ったらえっそっちのジャンル?!しかし更に読み進めるといややっぱりそっち?!という風に、どんどん変容していく小説で、先が気になり大変面白い。何を言ってもネタバレになりそうで困るなぁ。語りのレイヤーや伏線の置き方等複雑な部分もあり、何度もページを逆走して確認したりもしたのだが、その煩雑さも気にさせない、一種のノリの良さみたいなものがある。途中で登場してくるローラという女性の造形がなかなかよかった。野心家ではあるが、ちょっと専門バカみたいな所があり、駆け引きはするが悪女というわけではないという、紋切型ではない具体性がある。もっとも彼女に限らず、登場人物にしろその場の情景にしろ、描写は具体的でディティールが細かい。そんな中、テッドという人の個性はいまひとつ掴めないまま話が進む。しかしこれも作者の企みのうちだろう。最後まで気を抜けない。