神奈川県立近代美術館で開催中の展覧会「クエイ兄弟 ファントム・ミュージアム」にて鑑賞。2010年の作品。原作はスタニスワフ・レムの短編小説。暗殺の為、心を持った女性として作られた暗殺人形。ターゲットに出会った人形は彼に恋をし、本当に愛してしまう。しかし殺人の道具として作られた自分の性には抗えない。なおポーランドで製作された作品なので、ナレーションはポーランド語、字幕は英語。
 かねてから見たかったものの、2011年にイメージフォーラムフェスティバルで上映された際(当時は『マスク』という題名)には見損ねてしまったので、今回の上映は大変ありがたかった。なお、「クエイ兄弟 ファントム・ミュージアム」はパネル展示が多いとはいえ、撮影に使用された小道具や人形等もしっかり確認できるので、クエイ兄弟ファンは必見。
 レムの原作小説は未読なのだが、映像では中盤までは中世のおとぎ話のような雰囲気。王と女王が巡り合って結婚して、というような様子だ。しかし徐々に禍々しさが増していく。まあクエイ兄弟作品だから、最初からダークファンタジー風で薄暗い雰囲気ではあるのが・・・。「彼女」が変身を遂げる所で禍々しさはピークに達するのだが、同時にきらびやかで美しい。文字通りボディの素材からして変わってしまうのだが、機械仕掛けのカマキリのような姿は、なるほど男を食い殺すからこの姿なのかと。
 「クエイ兄弟 ファントム・ミュージアム」の展示を見てから映像作品を見るとよくわかるのだが、クエイ兄弟の映像作品は素人が見ても撮影技術が高いのだろう。映像には奥行、高さがあるように見えるのだが、実際のセットはさほど奥行きがない。展示品の中にも、レンズの特性を活かして奥行を強調した見せ方にしているものがあったのだが、アニメーション撮影にもそれが活かされている。