アーナルデュル・インドリダソン著、柳沢由実子訳
 工事現場で人間の骨のかけらが発見された。事件か事故かはわからないが、最近埋めたものとは思えなかった。かつて現場近くにはサマーハウスがあり、戦争末期に駐在していたイギリス軍やアメリカ軍のキャンプもあったらしい。捜査官エーレンデュルは被害者はこの付近に住んでいたのではと仮定し、昔を知る人への聞き込みを続ける。ある住民から、現場近くで緑色の服を着た女を見かけたという証言が得られた。彼女は事件の関係者なのか。
 エーレンデュルたちの捜査に派手さはなく、地道な情報収集を重ねていく「仕事」っぽさがいい。また、捜査官それぞれの仕事外の顔も描かれ、決して模範的とはいえない所も人間味がある。エーレンデュル自身は娘との確執を抱え、立ちすくんでいる状態だ。彼は子供達が幼い頃に離婚し、交流は途絶えていた。自分がなぜ妻子を置いていったのか、自分は娘に対してどんな感情を抱いていたのか、彼が少しずつ自覚していく様が胸を打つ。また、エーレンデュルはアイスランドの失踪者についての本を何冊も読んでいるのだが、その理由がわかる部分は痛切。
 捜査と並列して、ある家庭の様子が描かれるが、これがかなりしんどかった。DVの恐ろしさとそれに対する怒りが深く感じられる。物理的な暴力はもちろんなのだが、相手の尊厳、自己肯定感を奪い、本当に何もできない人にしてしまうところが、より恐ろしい。