特集上映「カリテ・ファンタスティック!シネマ・コレクション2016」にて鑑賞。ニコラス・ウィンディング・レフン監督、1999年の作品。レンタルビデオショップで働く映画オタクのレニー(マッツ・ミケルセン)と、恋人と同棲中のレオ(キム・ドボゥニア)は、仲間と集まり深夜にB級映画鑑賞会をするのが習慣だ。レオは恋人の妊娠がしたが、自分が父親になることを受け入れられず、いらだちを募らせていた。
 レフン監督の初期の作品て、ほんとに若気の至り感が強く、時に(というか往々にして)気恥ずかしい。冒頭、登場人物がそれぞれのテーマソングとも言うべき音楽と共に登場するのだが、うーんやってみたかったのはわかるけど結構恥ずかしいな!見ていて変なニマニマ顔になってしまう。とにかく何かと恰好をつけたがり、色々とやりすぎなのだ。ここから『ドライヴ』まで進化したのが奇跡に思える。もっとも、『ドライヴ』は恰好つけの極みみたいな作品だから、ぶれずに邁進したとも言えるが。
 とは言え、描かれる若者たち(見た目はおっさんだが若い設定なのだろう)の所在なさは切実で、現代でもあまりかわらず、時にいたたまれない。年齢は一応重ねていても、社会に「大人」としてフィットしきれない感じが生々しかったし、未だにこういう感じは他人事とは思えない。事態が勝手に進むことについていけず、いらだちを募らせ恋人に暴力をふるってしまうレオはひどいやつだとは思うが、いっぱいいっぱいで自分では処理しきれないという感じはよくわかる。また、女性とのデートをすっぽかしてしまうレニーが、「映画の話しかできない」から女性と付き合うことに踏み切れないというのも、なんだかしみじみとする。対人スキルもない、お金もない状況では、恋愛(だけではなく人づきあい全般)は荷が重いものだろう。ただ、レニーは一歩踏み出す(踏み出した瞬間の演出がロマンティックすぎて笑った)ので、ちょっとほっとする。
 なお、今や大人気のマッツ・ミケルセンだが、本作では実にさえない。この人、ストリート系のファッション、というかお金がなさそうな恰好が本当に似合わないんだな・・・。また、レニーが映画マニアということで、映画マニアがにやついてしまう小ネタが多かった。シネフィルあるあるとでもいうような「有名監督」のチョイスはなかなかにイタい。スピルバーグとか入れてやってよ・・・。