EUフィルムデーズにて鑑賞。日本人大使未亡人の住込み看護師として働くリザ(モーニカ・ヴァルシャイ)。彼女の傍には、彼女にしか見えない日本人歌手の幽霊・トミー谷(デヴィッド・サクライ)がいた。日本のロマンス小説に憧れるリザは、30歳の誕生日に外出し、小説内のシチュエーション通り、ハンバーガー店に入る。しかしその間に、トミー谷の呪いで未亡人は死亡していた。そしてリザに好意を持った男性は次々に変死していく。監督はウッイ・メーサーローシュ・カーロイ。
 1970年代のハンガリーが舞台の作品なのだが、何とも言えず奇妙な味わい。本作を日本配給した人、よく見付けたな・・・。日本へのオマージュが盛り込まれているが、70年代のハンガリーから見た「なんちゃって日本」なので、キッチュさが増している。九尾の狐とかよく知ってるなーとは思うが、本来の伝説とはまた違うものになっているし、作中で流れる日本語歌謡曲も、日本の歌謡曲のようでそうではないという不思議さ。当然、日本人観客ばかりの環境で見たのだが、おそらく本来は笑い所ではないところで笑いが沸く、そして本来の笑い所でも更に沸くというウケっぷりだった。当初はシネマカリテでのレイトショー上映だけだったように記憶しているが、もうちょっと上映規模広げても大丈夫だったんじゃないかな。 
  リザに好意を持った人は次々に死ぬという、結構ブラック、かつリザにとっては洒落にならないハードな状況なのに、死にっぷりが豪快すぎて笑ってしまう。そして一方では、すごくまっすぐなラブストーリーでもあるのだ。「なかなか死なない男」の粘り強さが素晴らしい。
画面内のディティールの作りこみ方は、ウェス・アンダーソン監督を思わせるところもあるが、アンダーソン作品ほど徹底していない。どこか野暮ったく隙がある。そこがかわいらしさでもある。善悪のジャッジが意外と曖昧で、混沌とした世界観なところがいい。
 ところで、カーテンでドレスを作るというのは、映画においてある種のセオリーなんだろうか。