“ファンクの帝王”と呼ばれるジェームス・ブラウンの全盛期に至る活動、そしてビジネスマンとして、黒人の権利を求める活動家としての顔に迫ったドキュメンタリー。監督はアレックス・ギブニー、プロデュースはミック・ジャガー。ミックは自身も本作中に登場し、JBとのエピソードを語っている。
 JBの権利を管理する、ジェームス・ブラウン・エステート所蔵の資料を自由に見られる権利を得て製作された映画だそうで、貴重であろう映像が多々見られる。特に当時のTV音楽番組の映像はインパクトがある。ミック・ジャガーも現場にいた(同じ番組の収録の為、順番待ちをしていたらしい)そうだが、JBのパフォーマンスの切れ味が鋭すぎ、全く色あせていない。これは一度見たら忘れられないし、そりゃあ熱狂しちゃうよな!と納得せざるを得ないのだ。ローリング・ストーンズはJBの後で収録したそうだが、ミック本人が当時の自分達の映像を見て、「(JBのステージを見たら)そりゃあ、「ローリングストーンズ?悪くないけど・・・」ってなっちゃうよな」と苦笑するくらい熱量がすごい。何でも、JBは自分が番組のトリでないことにご立腹で、観客全員打ちのめすステージを見せてやる!という息込みだったそうだ。やはりこの人はパフォーマーとしてすごく優れていたんだなと納得する。ファンクの帝王の名は伊達ではなかった。
 また、JBを支えるバンドの技術の凄さ、JBの音楽には彼のバンドが果たした役割がすごく大きいという所にちゃんと言及しているところも面白かった。JBは音楽を専門的に学んだわけではないので、彼の意図するところをくみ取るのは大変だったそうだが、それができるくらいの技量を持ったバンドだったのだ。JBは天才肌だから他人が出来ない、わからないということがわからず、なぜここまで登ってこないんだ!くらいの気持ちだったようだから、それについていくのは至難の業だったろう。ただ、お金の面でもJBは一緒に仕事をするのがかなり大変な人で、給料の遅配もしばしばだったそうだ。良くも悪くも王様なのだ。バンドメンバーの一人が、自分はJBを好きだったが彼に伝えたことはない、好意が伝われば弱みを見せたことになり利用されるから、と話すのが印象に残った。両親に捨てられたという育ち方から、他人を信用しない人だったそうだ。
 なお本作を見ると、JBの伝記映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』は本当に良くできていたんだなー!ということを実感できるので、合わせておすすめ。バンドメンバーとの確執や彼の孤独は、ドラマである『ジェームス~』の方がより伝わってくるかもしれない。