好き勝手に自分認定の「悪人」を退治していた元傭兵のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、ガンで余命宣告を受ける。恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)を苦しめることに耐えられず、自分達に加わればガンの治療が可能だという謎のスカウトマンの申し出を受ける。しかしウェイドを待っていたのは残酷な人体実験だった。実験の末、驚異的な回復能力を得たものの醜い外見になったウェイドは、覆面をつけた「デッドプール」として、実験の首謀者・エイジャックスことフランシス(エド・スクレイン)への復讐に乗り出す。監督はティム・ミラー。
 デッドプールは『Xメン』からのスピンオフだそうで、作中にはウルヴァリンらの名前が出てくるし(ちなみにデッドプールは『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』に登場していたらしいが全く記憶にない・・・)、現役Xメンのネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデグランド)とコロッサスがデッドプールの助っ人として登場する。が、デッドプールのノリはXメンシリーズとは全く違うコミカルなものなので、本編に合流というのは難しそうだなぁ。むしろ、Xメンシリーズを知らなくてもそれなりに楽しめるというところが、本作のいいところだと思う。最近の アメコミ映画は色々合流しすぎで、一見さんお断り感が高すぎる。
冒頭から映画関係(だけではないが)の小ネタ満載、かつデッドプールがいわゆる「第4の壁」を越えて観客に話しかけ、映画の「お約束」をことごとく膝カックンさせていくという、メタ度の高い作品。しかし本作のえらいところは、そういう面がありつつも、娯楽映画としての真ん中を打ち抜いており、ほどよくおかしく楽しいところだと思う。マニアックなネタは多いし血肉も飛ぶのだが、意外と観客を選ばないと思う。妙な言い方になるが、精度が高すぎない、ほどほどに隙間があるところがいい。最近のアメコミ映画の中では尺が短め(108分)なところも素晴らしい。
 デッドプールはほぼ不死身で言動も人を食ったものだが、心も不死身というわけではない。ガンによる余命宣告を受けた時も、ヴァネッサの方は、彼と最後まで向き合うつもりでいるのに、彼はヴァネッサを苦しめるのではということばかり心配し、彼女の覚悟に思いが至らない。彼自身が自分の身に降りかかったことと向き合えずにいるのだ。また、醜くなった姿をヴァネッサに見られたくないという気持ちは十分に理解できるが、彼女に危険が迫っている時でも、彼女の反応が怖すぎて話しかけられない所など、ティーンエイジャーのようなナイーブさだ。しかし、だからこそ見ていてはっとする。本作、愚直なくらいにまっすぐなラブストーリーなのだ。