エリック・ロメール監督特集上映「ロメールと女たち」にて鑑賞。エリック・ロメール監督、1986年の作品。レネット(ジョエル・ミケル)とミラベル(ジェシカ・フォルド)はルームシェアする友人同士。考え方も風貌も対称的な2人が繰り広げる、ちょっと奇妙なエピソード4編から成るオムニバス作品。
 ミラベルはクールかつシンプルなファッションで、性格もクールかつ割と現実的。レネットはガーリーなファッションをまとう美術学校生で、妙な所で理屈っぽく生真面目でお喋り。普通だったら、あまり接点がなさそうな2人だ。実際、2人の会話は必ずしもかみ合っているわけではなく、レネットがミラベルにやきもきしたり、ミラベルがレネットに対して少々うんざり気味になることもある。万引き未遂犯を巡る対話で如実に現れているがのだ、価値観や主義主張は、結構違う2人なのだ。しかしそれでも、2人の間に流れる空気は、親しい友人同士のものだ。また、2人は論争していても、お互いの人間性を否定するような喧嘩にはならない。関係性があっさりとしているようで、双方の信頼感がある。
 最初のエピソードはレネットとミラベルの出会いを描く。田舎道で自転車がパンクし困っていたミラベルを、田舎暮らしのレネットが助けたのだ。レネットはミラベルに田舎を案内し、“青い時間”(レネットによると、夜明け前、無音になる一瞬)を一緒に体験する。レネットにとって大切な時間であり、ミラベルはそれを分かち合った。この体験がなかったら、2人は友達にならなかったかもしれない。
 2人の対称的なファッションや室内の調度など、色合いが美しく目に楽しい。レネットとミラベルは同居するようになるが、室内のこの部分はレネットが飾り付けたのでは、このあたりはミラベルの趣味かなと、見ていて楽しい。壁に麦わら帽子と造花を飾っているのはレネットの趣味っぽいが、こういうの80年代にあったわー!とやたらと懐かしい気分になった。ただ、ロメール作品は屋内よりも屋外の情景の方が、光線に魅力が合って個人的には好きだ。屋内だと、構図も色も決まりすぎな感じがするのだ。