カーソン・マッカラーズ著、加島祥造訳
最近、『結婚式のメンバー』として村上春樹による新訳が出た、マッカラーズの代表作。本著は1990年に福武文庫から出たバージョンになるが、ご厚意により読み比べることが出来た。作品の印象はそれほど変わらない。ただ、村上版の方がより乾いており、主人公であるフランキーと周囲の「ずれ」が際立っていたと思う。また、特にベレニスの言葉や彼女に関する表現は村上訳の方が生き生きとしている気がする。対して加島訳の本著は、夏のねばっこい暑さやけだるさ等、フランキーを取り巻く空気感がより感じられた。ただ、文章上には表れていないが、訳者解説で言及されている加島の本作に対する解釈は、ちょっと違うんじゃないかなと思った。加島は本作を、フランキーが大人になる一夏の物語としてとらえている。それは間違いではないのだが、本作は「一夏」ではなく、おそらくフランキーがこの先ずっと、大人になっても抱えていく如何ともし難さを描いているように思う。大人になっても住むところが変わっても、フランキーはフランキーでそれ以外になれない、というところに苦しさがあるのではないか。「(中略)あたしはどこまでいってもあたしでしかないし、あんたはどこまでいってもあんたでしかない。こういうこと今まで考えたことない?変だと思わなかった?」