ジーン・ポーター著、花岡花子訳
片手のない、孤児院育ちの少年「そばかす」は、木材会社の社長マックリーンに見込まれ、リンバロストの森の番人として働き始めた。植物や鳥や獣たちを観察するうち、そばかすは物事を学ぶ喜びを知っていく。ある日、森で富豪の娘エンゼルと出合ったそばかすは、彼女に深い思いを寄せるようになる。1957年に日本で翻訳出版された作品なので、さすがに翻訳文の古さは目立つし、ここは誤訳では?という部分も。しかしその古風な感じが味わいになっている。もし新訳で出たら、却って良さが失われるような気もする。というのも、そばかすもエンゼルもマックリーンもとにかく清く正しい人で、「善き人」の全部盛りみたい(それはそれで、安心できていいんだけど)。また、お話も多分にご都合主義的に展開するので、現代の目で読むとちょっと辛いところがある。特にそばかすの生い立ちの真相など、あーあそうかーって感じ。乗り越えるべきものなどないんじゃん・・・ロマンスとしては退屈だなー。でもこれが当時の限界だったんだろうとはわかる。とはいえ、森の描写は生き生きとしており、世界の広さにそばかすが目を開いていく瞬間などもはっとする。なおマックリーンがそばかすを好きすぎて、エンゼルとの仲よりもむしろ気になってしまった。