様々な脅威から世界を守るアベンジャーズだが、戦いに伴う被害は大きく、一般人が多数死んだことへの非難の声は大きかった。これを受けて世界各国はアベンジャーズを国連の管理下に置き、国連の承認がないと活動できないという「ソコヴィア協定」を提案。自責の念に駆られていたアイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)は同意する。しかし自分の行動は自分で責任を持つべきだと考えるキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース(クリス・エバンス)は同意を拒む。同意書への署名式典が爆破テロに遭い、容疑者としてウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)が浮上。ロジャースがバーンズを庇ったことで、アベンジャーズ内の亀裂はさらに広がっていく。監督はアンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ。字幕版、吹替版、どちらもお勧め。
 『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』では作中の物的人的被害が甚大すぎて(小国滅んでるよな・・・)これ絶対非難されるだろ!と思っていたらやっぱりされていた。このあたりDCコミック陣営の『バットマンvs.スーパーマン』と似ている。『ウルトロン』後の物語となり、アベンジャーズのメンバーもソーとハルク以外は出演。更にアントマンとスパイダーマン、日本ではまだなじみが薄いブラック・パンサーまで駆り出されており、大変賑やか。1本の映画としてちゃんとまとまるのか?アベンジャーズシリーズだって結構ぐたぐただったのに・・・と心配していたら意外とちゃんとまとまっていて驚いた。『アベンジャーズ』『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』よりも格段に締りがいいし作中の伏線もしっかりしていると思う。ルッソ兄弟恐るべし。
 ロジャースはキャプテン・アメリカの名の通りアメリカを背負ったヒーローでそもそも軍人体質と思っていたので、協定に反対するというのはちょっと意外。同時に、企業家、発明家として独立独歩なはずのスタークが協定に応じるというのも捻っている。もっとも、 ロジャースは大戦を実体験して組織の移ろいやすさを痛感しており、スタークは「ウルトロン」での失敗により気弱になっているという、一応納得できる背景はあるが。アベンジャーズの他のメンバーに関しても、この人がこっち側につくのはこういう背景があるからだろうなと思え、さほど違和感はなかった。なんとか双方の落としどころを見つけようとするナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)の奔走には、「皆のお姉さん」的な趣があってぐっときた。キャプテン・アメリカのことを一番理解しているのは彼女かもしれない。
 アベンジャーズ内の分裂を描くが、どちらの側が悪いという話ではなく、ロジャースにもスタークにもそれぞれ言い分があり、それぞれ納得が出来るものではある。更に、「敵」にもちゃんと理由があり、単なる悪役ではないのだ。本作の「敵」はこれまでのような超人や悪の組織といったものではない(今までアベンジャーズないしはキャプテン・アメリカが対峙した敵の中では一番頭良くて努力家な気もするが)。動機は非常に人間的で、誰の心の中にもあるものだ。だからこそロジャースもスタークも敵の思惑に乗せられてしまうし、ある点においては敵に反論できない。それぞれにそれぞれの「正義」があり、それ故に折りあいを付けられない。手放しにどちらかを応援できないあたり、上手い作り方だと思う。私はキャップ派ではあるが、本作のスタークの処遇を見るとそりゃあ怒るし許せないわ!って納得しちゃうもんなー。
 アベンジャーズの面々、特にスタークが占める分量がかなり多いので、実質上アベンジャーズ3なんじゃないの?なぜキャプテン・アメリカのタイトルなのかなとちょっと思ったが、最後まで見るとやはり本作はキャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャースという人の物語だったんだなと腑に落ちた。終盤、キャプテンはある物を置いていくのだが、これが重い。それって今までの何もかもを捨てていくことじゃないのかとも思う。ロジャースは「自分が信じるのは(国や組織ではなく)個人だ」と言うが、自ら個としての戦いを選ぶということか。昔の西部劇やハードボイルド映画のヒーローみたいで、アメリカという国が理想とする正義の一つの姿なのかもしれないが、何だか格段に孤独だよなぁ・・・。
 なお、ロジャースがスタークに手紙を送るのだが、その内容がずるい!スタークはロジャースのことを許せないと思うのだが、こんな手紙もらったら許すと言わざるを得ないだろうし、ロジャースもそれをわかって出してるよな・・・。キャップ、案外狡猾かも。