家出中の少年トラヴィス(ジェームズ・クリードソン=ジャクソン)とハリソン(ヘイズ・ウェルフォード)は、荒野で一台のパトカーを見つけ、盗んでしまう。初めて車を乗り回してはしゃぐ2人だが、そのパトカーは悪徳保安官、ミッチ・クレッツァー(ケヴィン・ベーコン)のもので、トランクには絶対見られてはならないある物が入れてあったのだ。クレッツァーは少年たちを追跡し始める。監督はジョン・ワッツ。ベーコンは主演の他、製作総指揮としても参加している。
 コンパクトな作品だが、ちょうどいい感じのボリューム感。短く緊張感があるのもいい。映画の面白さってこういうことだよな!とうれしくなった。冒頭のクレジットやタイトルのデザインも、シンプルかつ率直だがそこがいい。
序盤、いかにも子供が好きそうなFワードを、トラヴィスとハリソンが唱えていく。トラヴィスがリードし、ハリソンがそれに続く。パトカーを見つけた2人は大はしゃぎで「ごっこ」遊びに興じるのだが、『スタンド・バイ・ミー』のような、子供の冒険物語のような長閑さとノスタルジーを感じる。パトカーや銃に対する無邪気な憧れは、微笑ましいというにはあまりに危なっかしいが(特に銃の扱いには、次の瞬間には大惨事になるのではと冷や汗かいた)。
 しかし、視点が少年たちからクレッツァーに移ると、映画はまた違った側面を見せる。クレッツアーにとってはとある「事情」を隠蔽しおおせるかどうかの進退を賭けたサスペンスだし、少年たちにとっては「事情」を知ってしまったが為に保安官に追われるサスペンスなのだ。ケビン・ベーコンが得体のしれない不気味さを醸し出しており、手段を選ばす少年たちを追いかける姿には鬼気迫るものがある。同時に、必死すぎて笑っちゃう(あそこまで効率悪い車泥棒は久しぶりに見た)ところもあり、恐怖と笑いが混然一体となった、何とも言えない味わいが生まれている。様々なジャンルが混じっているように見えるが、一貫して少年たちの「旅」の物語ではあるというところはブレがない。クレッツァーは少年たちにとって倒す/逃げるべきモンスターであるようにも、また「悪い父親」であるようにも見えてくる。そういえば、トラヴィスもハリソンも実父のいない家庭の子だ。
 クライマックス、今までのトラヴィスとハリソンの関係が逆転し、「時速100㎞」を越えるシーンにはぐっときた。2人の姿には、少年の冒険といったノスタルジーはもはや感じられない。彼らが向かうのは大人の世界で、そこで戦っていくのだろう。ハリソンの顔を正面から映したショットが、ハードボイルド作品のようで本当に素晴らしいのだ。