朝井リョウ著
就職活動を控えた大学生の拓人は、バンドをやっている同居人の光太郎の引退ライブを見に行った。光太郎の元カノ・瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいると知り、一緒に就活対策をするようになる。SNSの功罪をまざまざと見せつけられるような小説だった。拓人たちは皆SNSをやっているが、SNSでの発言をお互いそれとなくチェックしている。実際に見聞きする言動と、SNSに漏らす言葉とのギャップ、SNSでの「自己アピール」の裏側に見え隠れする本心とのずれが、彼らの関係を変えていく。SNSがあることで、自分を「何者」かに見せたくなってしまう、しかし見せたところで実際に「何者」になれるわけでもなく更に自意識と承認欲求が悪目立ちするという悪循環。どうすれば「あがり」になるのかわからないゲームの止め時を見失ったみたい。拓人は周囲をとてもよく観察しており、友人たちの必死さもかっこ悪さも、そこから少し距離を置いて見つめていように見える。が、この距離がひっくり返される構成で唸った。読者を安全圏に置かないのだ。彼らのような、より出来る自分、かっこいい自分に見せたいという欲望や無駄なプライドは誰にでもあるのだ。だから読んでいて心がチクチクする。就職活動を今現在している人とか記憶がまだ生々しいという人には、ちょっときついのかもしれない。私くらいの世代だと、あの時SNSがなくてよかった・・・と胸を撫でおろしそう。