フランシス M.ネヴィンズ.Jr著、秋津知子訳
著名なミステリー作家であり、『エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン』の創刊者でもあるエラリイ・クイーンの、数少ない評伝。エラリイ・クイーンはフレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リーの従弟による共作のペンネームだが、具体的にどのように作品を作っていたのかは殆ど伏せられており、評伝の類もわずか。本作はリーの死後に発行されており、晩年のダネイには取材できたようだ。それでも、評伝と言うにふさわしいかというと何とも言えない。生い立ちや作家を志したきっかけについては具体的なエピソードが得られているものの、クイーン名義で活躍してからの2人の人物像には今一つ迫れていないように思う。一方で、クイーンが手がけた長編、短編、アンソロジー、ラジオドラマ・テレビドラマ・映画脚本についてはほぼ網羅しコメントをしているところは力作と言えるだろう。特にラジオドラマについては、本作が執筆された当時ですら資料が乏しかっただろうところ、貴重な資料になっていると思う。個々の作品に対する著者の評論が妥当かどうかはよくわからない(私は一部のクイーン作品しか読んでいないので。ただ、既読の作品に限ってだが、そうかな?と首をひねった部分は結構ある)のだが。そしていまいちな作品に対してはかなり辛辣だ。辛辣な方向に冗長な文体なので、批評としてはちょっと感情的だなと思ったところも。また、作品の中でしばしば政府のプロパガンダ的な要素が発揮されている(政府に協力的というよりも、政治的な主義主張に関して無頓着に時代の空気に乗っかっていく傾向があるということでは)という指摘にはなるほどと思った。当時の感覚がわからないと、何を意味しているのか読んでいてぴんとこないところがあるので。