2005年のニューヨーク。金融トレーダーのマイケル・バーリ(クリスチャン・ベール)は、住宅ローンを含む金融商品(サブプライム・ローン)は近いうちに債務不履行になると気づくが、銀行は彼の予測を相手にしなかった。そこでバーリはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融取引に注目し、サブプライム・ローンの価値が暴落した際に保険金が支払われる契約を投資銀行と結ぶ。その頃、バーリーの予測を知った銀行員のジャレット・ベネット(ライアン・ゴスリング)は、金融業界の非倫理性に嫌気がさしているヘッジファンド・マネジャーのマーク・バウム(スティーブ・カレル)にCDSへの投資を勧めていた。半信半疑のバウムだったが、自分たちでサブプライム・ローンの実態を調べ愕然とする。一方、若い投資家のジェイミー・シプリー(フィン・ウットロック)とチャーリー・ゲラー(ジョン・マガロ)は、ウォール街で一山当てようと伝説の銀行家ベン・リカート(ブラッド・ピット)に協力を仰ぐ。監督はアダム・マッケイ。
 邦題のサブタイトルは「華麗なる大逆転」だが、確かにマイケル達は逆転するものの、華麗さや爽快さは薄い。むしろ苦さ、シニカルさが強くにじんでいる。彼らの大逆転はかなりきわどいもの(サブプライム・ローンは明らかに破綻しているのに、なかなか証券の価格は落ちない。ウォール街全体がなれ合いの共犯関係にあるからだ)だし、破綻の規模があまりに大きくて、これに乗じて利益を手にしてもその足元には死屍累々なのが一目瞭然なのだ。彼らは確かに経済破綻を予測し投資に成功したが、それはこの破綻を生み出した金融業界の無茶があってこそ。その尻馬に乗ったにすぎず、非倫理性を正せたわけでもなく、業界改変に貢献できたわけでもない(最後の「その後」の情報も実に苦い)。倫理観が強いマークは、それもよくわかっており、だから非常に葛藤するのだ。しかし、この業種を選んだ以上、マークと同じような選択をせざるをえないのだろう。
 面白い作品だが、私にとっては楽しい作品というわけではなかった。これは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(マーティン・スコセッシ監督)を見た時にも思ったのだが、大量のお金が(上がるにしろ下がるにしろ)動く時のパワー、そこに集まる人達の熱量がすごい。このわーっと熱量が集中してコントロールできなくなりそうな感じが自分は苦手なんだなと再確認した。
 素人にはなかなか分かり難い金融の専門用語や今何が行われているのか等を、登場人物がスクリーン越しに観客に説明してくる(第四の壁を越えるというやつか)演出を多用しており、固い素材だがコミカルな描き方だ。ただ、この演出、あまり洒脱とは言えなかった。この方法がダサいというのではなく、いまひとつこなれていない感じ。情報量が多すぎてさばききれていない気がした。
 ちなみに、「入浴中の金髪美女が解説しよう!」みたいな今時なんぼなんでもこれはダサいだろうという見せ方も。このシーン、ジャレットによる「皆こういう説明じゃないと聞く気しないでしょ?」というフリで登場するのだが、これってジャレットのセンスがこのくらいのダサさ(色々癇に障る嫌みな奴なので)だよってギャグなのかな。それとも映画を作っている側がこういうのでいいと思っているってこと?