カミラ・レックバリ著、富山クラーソン陽子訳
長女が生まれ、育児に追われるエリカとパトリック。パトリックは育児休暇を取っているが、職場である警察署の様子が何かと気になり、エリカは執筆に専念できずにいた。自宅の屋根裏で母親の古い日記とナチスの勲章を見つけたエリカは、地元の歴史家エーリックに勲章を預けた。しかしエーリックは殺されてしまう。エリカは母の日記を読み始めるが、冷淡だった母が書いたとは思えない情感豊かなものだった。しかし日記には戦争の影が落ちるようになり、ある日を境に途切れてしまう。スウェーデンの人気ミステリシリーズ5作目。第二次世界大戦中の出来事が現在に影響する歴史ミステリとしての側面と、エリカ姉妹の母親はなぜ娘たちに冷淡だったのかという、家族のミステリとの2本柱だ。北欧のミステリを読んでいると、ネオナチや過激な右翼が度々登場するが、本作にも移民排斥を訴える右翼団体が登場する。労働問題や国の財政問題との関わりが深いのだろうが、この偏狭さ、違うものを排除したいという欲望は何なんだろうなと毎回考えてしまう。ただ、一方で新しい価値観に目を開く人物もいる。毎回厄介者扱いされていた警察署長メルバリに、まさかの転機が訪れる。これには、人間何歳になっても変われるのかも、捨てたもんじゃないなって気分に。そして愛は人を変えるのかと(笑)。語弊があるかもしれないが、ミステリ以外の部分にとても読み所がある。「育児あるある」「夫婦あるある」が満載で、夫婦間で感じる不公平感や親子のわだかまり等、細かいニュアンスがよく書けていて、恋人から夫婦へ、家族へ(あるいはその逆)と生活が変わるにつれて、登場人物たちどのように変わっていくのかという点で、とても楽しめるシリーズだと思う。