ジェイムズ・トンプソン著、高里ひろ訳
ヘルシンキ警察の警部だったカリ・ヴァーラは、フィンランド国家捜査局で特殊部隊を指揮することになる。しかしその業務は超法規的なものだった。ある日、移民擁護派の政治家が殺害され、東武を切断される事件が起きる。さらにそれに対する報復殺人と見られる事件がおき、国内の空気は一気に不穏なものに。そんな中、フランス政府に雇われたという男がカリの前に現れる。『極夜』『凍氷』に続くシリーズ第3弾。これまではフィンランドの風土・文化を交えたダークな刑事小説という感じだったのだが、ここにきていきなり方向性が変わってきた。カリは正義感が強いが、正義の為なら手段を選ばない、ダークヒーローのようになっていく。完全に「あちら側」に行ってしまうのだ。正義の為と言いつつやっていることは盗みや殺人といった犯罪行為だ。更に脳腫瘍の手術の後遺症のせいで感情がマヒし、白か黒かという極端な考え方になっていく。さらにカリは妻のケイトまで巻き込んでしまうのだ。事件と調査の進展の仕方はちょっと強引なのだが、カリが何かを失っていく様、それでも自分の正義漢に突き動かされ進み続けてしまう様が読ませる、というか「そこまで行ったらもう戻れないぞ!」とハラハラしつつ読まないといけない気がしてしまう。それにしても本作で描かれるフィンランドの移民憎悪はリアルなものなのだろうか。だとするときついなぁ。更に本作の表紙、雪かと思ったらこれは・・・。