過去のある出来事により、周囲との関わりを最小限にとどめ、ひっそりとくらしている靴職人見習いのキム・レオン(レン)は、ある日、公園のベンチで酔っぱらっていた女性ソナ(韓英恵)に絡まれるが、彼女のことが忘れられずこっそりと尾行してしまう。レオンの同僚・小風秋子(青柳文子)はレオンに片思いしていた。一方、ソナの友人で彼女の靴を修理するために来店したナム・サンス(ミンヒョン)は小風に一目ぼれし、ソナの恋人ユ・ジウ(JR)は語学教師の幸田加奈子(木南晴夏)に好意を寄せる。監督・脚本は今泉力哉。
 なんだかホン・サンス監督の作品に少女漫画テイストを投入したような雰囲気だなーと思っていたら、今泉監督は本当に「日本のホン・サンス」って言われていたのか・・・。今泉監督の作品を見るのは初めて、かつ本作に関する事前情報は予告編のみという状態で見たんだけど、予想以上に面白かった。最初にレオンの状況を字幕で説明しちゃうのには、えっこの先大丈夫かな?と心配になったけれど、徐々に「映画」っぽさが増していく。レオン、サンス、ジウの韓国人男性3人が大変美形で、アイドルかモデル系の人たちなのかな?と思ったら、韓国アーティストグループNU'ESTのメンバーだそうだ。映画の作風はいわゆるインディペンデント系の匂いがするもので、他の出演者もその系統の映画で良く見かける面子なのに、この3人だけがキラキラしていて不思議な雰囲気。ただ、他から浮いているということはなく、お芝居も悪くない。特にミンヒョンは間の取り方がしっかりていて、コメディのセンスがあるんじゃないかなと思った。
 片思いが連鎖していくような群像劇だが、妙なおかしみもあり、客席からも笑いが沸いていた。おかしみは主に会話から生じている。人と人との会話は、必ずしも受け答えに筋が通っているわけではなく、キャッチボールになっていない双方投げっぱなしの時もあるし、いきなり文脈が脱線したりもする。そういうちぐはぐな部分の作り方が上手い。そして、そういう部分がある方が会話って面白いのかなと思わせる。
 コミュニケーションが一方通行というシチュエーションが、本作には度々出てくる。彼らは、自分が想うあの人が何をしているのか、何者であるのか知らない。誰が自分を想っているのかも。なるほど「知らない、ふたり」なのだ。ソナは酔って「一目ぼれは、だめだよ」と言う。あまりに相手を「知らない」からだろう。自分は、あの人はなぜ好きになったのか、根拠がわからないのだから。しかし知らないってことは、知りたいと思う余地がいっぱいあるということだ。本作に登場する人たちは、知ろうとするのだ。最後にある人が、恋をした、と言うのはそういうことかも。