特集上映「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016」にて鑑賞。2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナルコンペティション部門優秀賞&NETPAC特別賞受賞作品。監督はアピチャッポン・ウィーラセタクン。
 タイ北部の田舎町。撮影クルーは行商人に物語を話してほしいと頼む。行商人は即興で物語を語り、その続きを象使いの少年、伝統芸能の劇団員、食堂の店員やろう学校の生徒ら、様々な人たちがリレー式に即興で語り継ぐ。
 本作が山形国際ドキュメンタリー映画祭に出品されていたというのは、何だか不思議でもある。ごく普通の人たちが話す様子を記録しているという意味ではドキュメンタリーと言えるのだが、撮影されている彼らがやっていることは、「物語」を語るという行為であり、そういう意味ではフィクションを記録しているとも言える。更に、彼らが語る物語に合わせて、再現ドラマを挿入したり、イメージを膨らませる映像を挿入したりと、「物語」としての肉付けに積極的なのだ。物語を作る様をドキュメンタリーとして記録しているとも言えるのだが、はたしてフィクションとノンフィクションの境目はどこにあるのか、ドキュメンタリーとはそもそもどういうものなのか、考えさせられる。本作は、かなり恣意的に「物語」へ接近したドキュメンタリーなのだ。撮影した映像と既存の映像(多分過去の報道やTV番組など)との組み合わせが巧みで、構成力の高さが垣間見られる。
 本作に登場して物語をリレーしていく人たちは、語り手としては素人。物語の展開も、予想もつかない素っ頓狂な方向に転がっていく。出来あがった「物語」としてはいびつでへんてこなのだが、語り手の年齢や性別、おかれた環境が少しずつ反映されているように見え、そこが面白い。子供のお話はそれまでの文脈をほぼ無視してくるので、その唐突感がユーモラス。全く別のものを
 なお、終盤延々と校庭や水辺で遊ぶ子供たちの姿が映される。他作品でも似た傾向があったけど、最後を遊びや運動など、遊戯性の高い映像で締めるのは監督の趣味なのかな。