若林正恭著
芸人として若手時代を泣かず飛ばずで過ごし、長い長いモラトリアム時代を経た”ぼく”は、世間に馴染めない世間離れした人間になっていた。お笑いコンビ”オードリー”である著者が、自分と世間との乖離、世の中に対する疑問を、熟成されたひねくれ精神を発揮して綴ったエッセイ集。今回、完全版として単行本未収録部分を加え文庫化された。単行本化された時から話題になっていたが、確かに面白い!私も世間の「王道」に素直に乗れない方なのでわかる!と思いつつ、うわー自分イタいわ!と共感したり突っ込んだり。同じようにイタがりながら共感する人は多いんじゃないだろうか(だからヒットしたんだろうし)。著者は芸人として売れない期間が長く、ブレイクしたのは30代になってから。もう人格も価値観も固まってある程度自分を客観視できるようになった人が、いきなり「世間」に放り込まれたという状況自体の面白さ、視点の新鮮さがある(お金があれば片頭痛を治せるという「発見」などまあしみじみするよな)。自分の感じる違和感がどういうものなのか、何に由来しているのか的確に言語化できるし、違和感を感じている自分を更に客観視して面白さに変換できている。だからイタさよりも面白さの方が上回っているんだろうな。芸人として売れていくにつれ、著者のものの見方も変わっていくので、そこはちょっと安心した。売れてよかったねー(笑)