相変わらず新刊はなかなか手に取れないが、より翻訳小説への志向が自分の中で強まってきたように思う。

1.『20世紀イギリス短篇選(上、下)』
有名どころから日本ではそれほど知名度が高くない作家まで、活躍時期も幅広く収録されており、名品揃いのお得な短編アンソロジー。翻訳小説好きの方には強くお勧めする。

2.ホレス・マッコイ著『彼らは廃馬を撃つ
ひと山いくらみたいな扱いをされる人間が、取り繕えないほど精神がすりきれてしまう様が痛々しい。1930年代の話なのに今日的。

3.ウィリアム・トレヴァー著『恋と夏』
夏のきらめきとはかなさが瑞々しく描かれる。題名がど直球!トレヴァーの作品の中では割と軽やか(陰はあるが)だと思う。

4.トム・マクナブ著『遥かなるセントラルパーク(上、下)
スポーツ小説の名作であると同時に、どの分野にもプロがおり、プロの本気はかっこいいぞ!と思わせてくれる。

5.エドワード・P・ジョーンズ著『地図になかった世界』
奴隷制がしかれるアメリカ南部を中心に、時代も場所もいったりきたりしつつ世界が描かれていく。ある境界と、そこを越えようとする人たち、越えられた人たちの物語。

6.ラッセル・ブラッドン著『ウィンブルドン』
これまたスポーツ小説の傑作。そのスポーツのことを知らなくても面白い小説は面白い。なおキングとツァラプキンのいちゃいちゃ感、もとい友情の深さにぐっとくる。

7.尾崎真理子著『ひみつの王国 評伝 石井桃子』
『くまのプーさん』の翻訳家として有名な石井桃子の評伝。本人があまり自分のことを語りたがらない人だったそうだが、周辺の人たちへの取材を積み重ね、パズルのピースを埋めていく労作。石井の生真面目、潔癖な一面が印象に残った。

8.稲泉連著『復興の書店』
東日本大震災で被災した各地の書店が、なぜ営業再開へ踏切り、どのように軌道に乗せていったのか、苦闘を追ったルポ。人はどういう状況でも、生活にプラスアルファのものが必要なのだ。

9.エリザベス・ボウエン著『パリの家』
子供たちへと繋がる大人たちのいざこざとすれ違いは、静かなトーンで描かれるものの苛立ちに満ちている。人生の不自由さがしみる。右往左往すらできない不自由さがあるのだ。

10.ピエール・ルメートル著『その女アレックス』
今年出版された同著者の『悲しみのイレーヌ』にすればいいじゃないかと突っ込まれそうだが、こっちの方がやっぱりインパクトあるんだよな(笑)。