アカデミー賞を受賞したものの、その後15年間泣かず飛ばずで食い詰めていた脚本家キース(ヒュー・グラント)。エージェントのコネで、田舎町の大学でシナリオコースの講師をすることになったが、着任早々女子学生に手を出すわ、休講にするわでやる気を見せない。しかし、受講生の1人でシングルマザーのホリー(マリサ・トメイ)ら学生たちの熱心さや、学科長ラーナー(J・K・シモンズ)の誠意に触れるにつれ、徐々にやる気を取り戻していく。監督・脚本はマーク・ローレンス。
 主人公のキースは、ヒュー・グラントだから許されるキャラクターだなとつくづく思う。来て早々に自分が担任する予定の女子学生と寝ちゃうあたり、授業やる前にクビかよ!と突っ込みたくなるし、懇親会での時代錯誤も甚だしいセクハラ発言の数々は、他の人がやったら単に腹が立つだけなんだけど、ヒュー・グラントだと、そういう人だよなーという説得力の方に力が働くみたい。キースはこういう感覚で生きてきた人だから、そりゃあ脚本売れなくなるよなって納得するのだ。彼は良くも悪くも、15年前から変わっていない。15年前のアカデミー賞授賞式でジョークを放つ自分の映像を見る姿はもの悲しくもある。彼は外の世界の変化に目を向けず、自身もアップデートされていなかったのだろう。
 そんな彼が、学生たちと接する中でだんだん変わっていく。相変わらず情けない人ではあるのだが、本気で「物語」を書くことを教えようとするのだ。ちょっとアホだけど、基本的に素直なのだ。将来有望な学生をエージェントに紹介するあたりでも、「面白いものは面白い」という素直さがあるんだなとわかる。自分がいっちょ噛みできそうなシチュエーションなのにそうはしないのは、キースが若者を導く立場、自分が「主役」ではなくてもいいという立場に移行することができたから、そして誰の作品であっても面白い映画が好きだからだと思う。
 再出発に年齢は関係ないという側面もあるが、年の功、というものについて考えた作品でもあった。キースはいわゆる年の功がない人だろう。一方、ホリーの言動からは、年の功というものをしみじみと感じた。彼女の彼女の受け答えは機知に富んだ、かつ良識のあるもので、周囲への配慮が細やかでとてもいい。元々の素質もあるんだろうけど、ある程度経験積んでいないととっさの気のまわし方とか、周囲への思いやりとかってうまく発揮できないものだと思う。