ドリス・ドレッシング著、青柳伸子訳
アフリカで育った経験を持つ著者による中編集。1964年に出版された(1973年に再編集版を出版、日本では2008年出版)とアフリカの風土、そして(当時は)植民地であるという背景が色濃い作品集だ。エキゾチズムが前面に出ているのかなと思ったら、確かにそういう側面もあるにはあるのだが、心をガツンと殴ってくるような暴力的なものをはらんでいる。今までなじんでいた世界から隔絶しているような状況、あるいは、その土地に長年暮らしてきたはずなのに、その土地のものとして真には受け入れられないという感覚がある。白人女性と地人の使用人少年のすれ違いを描く「リトル・テンピ」は、2人の間に決して相互理解は生まれない、女性は少年が望んだものが何なのかわからないままだろうとやりきれない気持ちにさせる。女性にとって少年は同じ土俵に立っている相手ではないのだ。この、入植者たちは原住民を別の動物として見ているということがどの作品でも前提としてある。しかしそうではない世代も出てきて、彼らはおぼろげながらも新しい世界の為に戦おうとする「アリ塚」のような作品も。一方、植民地の白人たちは、土地の広さとは対称的に狭い世界で生きており、それが息苦しさをつのらせる。少女の目からそれを描いた「ジョン爺さんの屋敷」や、愛し合っていたのは誰と誰だったのかと茫然とする「七月の冬」が印象に残った。