梨木香歩著
シングルマザーの珊瑚は赤ん坊の雪を抱え、どう働けばいいか途方に暮れていた。そんな折、「赤ちゃん、お預かりします」という張り紙を見かけ、年配女性くららに雪を預けることになる。親との縁が薄く他人に頼ることを知らなかった珊瑚が、徐々に周囲と関係を強めていく。珊瑚は何でも自分で何とかするのが当然という境遇で育ち、自立していると言えば自立しているが、その世界は狭く世間知らずでもある。彼女が少しずつ世界を広げていく様は成長物語のようでもある。ただ、彼女の生き方を本作は手放しで賞賛しているわけではない。肯定はしているが、彼女を否定する人もいるだろう、見方を変えればこう見えるだろうということをちらつかせる。珊瑚自身が、同情をかっているように見えるのではないか、「かわいそうだから応援しよう」的な接し方をされているのではないかと神経を使っている。彼女はそのように見られたくないし、施しは受けたくない。だからこそ頑なに一人でなんとかしようとしている(本作は、そこからいかに柔らかくなっていくかという話でもある)。しかしそれでも、そういうふうに見る人はいる。終盤、珊瑚は1通の手紙を受け取るのだが、これが強烈だ。ただ、珊瑚は反感買うだろうなと言うのはわからなくはない。真面目すぎる人、ストイックすぎる人が傍にいると、何となく自分が責められているような気分になる人もいるんじゃないかなー。