山内マリコ著
地方のキャバクラで働く愛菜は、同級生で昔から女子に人気があったユキオと再会してはしゃいでいた。そのユキオは地味で目立たない同級生だった学と再会し、ストリートアートに夢中になる。3人は1か月前から行方不明になっている女性・安曇春子を模したグラフィティを町中に描いていく。一方、町では男性を襲う女子高生らしき「少女ギャング団」が横行していた。『ここは退屈迎えに来て』に引き続き、地方の町で暮らす若者(本人たちは若者としての時間が終わると感じているが全然若いよなあ)たちが主人公。彼らの今も未来もどこかおぼつかない。自分がどうすれば幸せになるのか、どこにいるとぴたっとハマるのか、つかみあぐねているように見える。そのことに気づいているのかどうかもおぼつかないのだが。その痛々しさを最も体現しているが当の安曇春子。しかし本作、ラストに力強いエールがある、これもありだという解放感。あの人たちにかまうことはない、自分達には自分達の生き方があるのだ。ファンタジーに片足突っ込んだ感じでもあるのだが、あえてそれをやったところに著者の「こうであれ」という願いみたいなものを感じた。