ピエール・ルメートル著、橘明美訳
女性2人の惨殺死体が発見された。捜査担当になったカミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下らと共に奔走するが、やがて第二の殺人が起こる。ヴェルーヴェン警部は事件の共通点に気付き、恐ろしく入念に計画された連続殺人と判断する。『その女アレックス』が大ヒットしたルメートルのデビュー作にして、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの1作目。これでデビュー作かよ!と思わずうなる面白さ。『~アレックス』とはまた違ったひねり方で魅せてくれる。ある時点で、自分がこれまで読まされてきたものは何だったのかと戦慄させられた。ただ、基本的にものすごくクオリティの高い一発芸的な作風だなとは思う。そもそも、フランスのミステリは割とそういう傾向がある気がする。ミステリとしてあッと言わせられるというだけではなく、カミーユとその部下たちの造形やバックグラウンドの作り方にも味わいがあり、楽しい。先に『~アレックス』を読んでいるので、あの人はこの後こういうことに・・・とほろ苦い気持ちになったり、あの人は実はこうなんだよなぁとニヤリとしたりという、シリーズ作品を遡って読む時ならではの楽しみ方が出来た。プロットの鮮烈さばかりが印象に残りがちだけど、実は人間の造形や関係性の設定の仕方、見せ方に長けているんだよなと再確認。