かつて伝説的な殺し屋として、裏社会で知らぬ者はいなかったジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)。愛する女性と巡り合ったことを機に引退し、妻と穏やかな日々を送っていたが妻は若くして病死。彼女が遺したのは1匹の犬だった。しかしその犬がとあるきっかけでロシアン・マフィアのヨセフ(アルフィー・アレン)に殺される。怒りに燃えるウィックは復讐に乗り出すが、ヨセフの父親はウィックのかつての雇い主でロシアン・マフィアのボスであるヴィゴ・タラソフ(ミカエル・ニクヴィスト)だった。監督はチャド・スタエルスキ。
 野暮ったさとかっこよさのぎりぎりのラインを狙っている感じで、大変楽しかった。テレビ東京の午後のロードショー枠をぼんやり見ていてこんな映画が放送されていたら、うれしくてニマニマしちゃうだろう。もちろん、劇場で見る方をお勧めするが、雰囲気としての「午後ロー」感が濃厚なのだ。
 今回、格闘シーンにかなり力が入っており、キアヌの動きのキレもいい。キアヌといえばいまだに『マトリックス』だが、本作のアクションは『マトリックス』のようなファンタジックなものではなく、肉体の重みやきしみを感じさせるもの。ロシアの軍隊で導入されている格闘技がベースになっているそうだ。銃を使いつつ、ちゃんと体を使ったとっくみあいも見せてくれるのが楽しい。カンフー映画大好きなキアヌの意向も大分反映されているのではないかと思う。銃での殺し方も妙に几帳面というか、きちんとしている(ちゃんと複数発使ってとどめをさす)あたりも「仕事」っぽい。
 面白いなと思ったのは、身体を駆使した、リアリティのあるアクションに対し、その背景となる世界観や設定は非常にフィクショナルだということだ。マフィアの組織構成や対抗組織の有無など(リアル寄りだったらないはずないと思うが)具体的には示されない。何より、プロの殺し屋たちの定宿であり中立地帯である「ホテル」の存在や、パーフェクトすぎるホテルのフロント係、また「清掃業者」達など、漫画やアニメの中で親しんできたような造形だ。ぎりぎりやりすぎにならないくらいの所。キアヌはこういうフィクショナルな設定や世界観が似合う俳優だが、本作ではそれに加えて自身の身体性が存分に発揮されるアクションを披露しているという、相反するものの組み合わせが面白いなと思った。『マトリックス』は、絵として面白いアクションシーンを見せていたけど、身体性は(そもそもそういう方向性の話だから)薄いんだよな。
 本作、コンパクトにまとまっているが、序盤の妻とのエピソードが冗長、ゆるいと感じる人もいるかもしれない。ただ、この序盤があるからこそ、ウィックにとって犬がどういう存在で、なぜ復讐に駆り立てられるか見ている側にも納得がいくのだ。単に「犬を殺された」ってことじゃない(犬を殺されたってだけでひどいことだけど)んだよね。