10歳のジャック(イボ・ピッツカー)は6才の弟マヌエルと、シングルマザーの母親と3人で暮らしている。ある事情で母弟と離れて施設で暮らすようになったジャックは、施設に馴染めず、家族と会える夏休みを心待ちにしていた。しかし夏休み前日、母親から迎えに行けないという電話が入る。ジャックは落胆し、加えてある事件を起こしてしまい、施設を飛び出して家を目指す。監督はエドワード・ベルガー。
 ジャックは10歳にしては実によく働く。弟を起こして着替えさせ、朝食を用意し、買い物に行き、弟の遊び相手をする。施設でも素直に料理の手伝い(野菜を切ったりする)をするのだが、普段からこういうことをやり慣れている子なんだなということがわかる。作中、ジャックは常に動き回っていて落ち着きがないのだが、常に何かに追われているようでもあった。自分がちゃんとしないと、という気持ちがいつも付きまとっているように見え、健気ではあるが、どこか痛々しくもある。
 ジャックはマヌエルを連れて、いなくなった母親を探し回る。仕事場や昔の恋人など、そこら中を訪ねて回るのだが、大人たちはそっけない。そんなものかという気もする(他人の子供だしなぁ)けど、もうちょっとフォローを、と思ってしまう。とはいえ、ジャックにとってそういった(施設のような)フォローは自分と家族とを邪魔するものという認識にもなるのだろう。母の元恋人の判断はまあまあ順当なのだが、ジャックは激怒する。彼にとっては、母親と弟と一緒に暮らすことが何より大事なのだ。
 それだけに、終盤のシーンはぐさりと突き刺さる。ジャックが子供であることを断念したことが、表情にありありと現れているのだ。10歳の子供がこういう判断をせざるをえないのは、やはり残酷なことだと思う。彼はここで子供であることをやめたんだな、ということがはっきりとわかるのだ。
 ただ、彼らの母親を強く責める気にもならなかった(見る人によってはすごく腹が立つかもしれないけど)。幼い子供を放置したのは大問題ではあるのだが、彼女はまるで駄目な母親というわけでもない。自宅の室内もそれなりにきちんとしているし、子供たちのことを可愛がっているのは間違いないのだが・・・。ぽこっと母親としての意識が抜けちゃう時があるって感じなのだが、常に母親で居続けるというのも難しいと思うんだよね・・・。