少年院でトラブルばかり起こしたエリック(ジャック・オコンネル)は、19歳にしてとうとう刑務所に移送されてしまう。そこには彼の父・ネビル(ベン・メンデルスゾーン)も収容されていた。囚人の更生に尽力する心理療法士オリバー・バウマー(ルパート・フレンド)のグループ療法に参加するうち、エリックは徐々に変化していく。しかし彼の行動を問題視する人たちもいた。監督はデヴィッド・マッケンジー。
 マッケンジー監督作品は『猟人日記』『パーフェクト・センス』と見てきたが、毎回方向性は違うが、どこか似た不思議な雰囲気がある。どこか強く緊張させられる、何かに脅かされそうな気配があるのだ。本作の場合、刑務所という荒っぽい舞台と、何をしでかすかわからず爆発しそうなエリック達のぴりぴり感が緊張を強いる。実際、ちょっとしたことで誰もが暴力を爆発させるし、そうしないとこの場では臆病者扱いされてなめられるのだ。しかし彼らの暴力は、周囲を威嚇するものであると同時に、周囲に対する怯えの一つの形でもある。
 バウマーは怒りや恐怖をコントロールする方法をエリックに教えようとする。怒りや暴力に流されないこと、周囲に派生させないことが自分を守ることになるのだ。ただ、バウマーが教える自衛の方法は、出所した後、一般社会の中で最も有効であり、刑務所という特殊な世界の中では必ずしもエリックを守らない。一方ネビルは、刑務所の中の作法をエリックに教え込み、自身もその作法でエリックを守ろうとする。しかしそのやり方は刑務所の中でしか有効ではなく、エリックをその世界に縛り付けること、彼が自立していく力をそぐことになりかねない。
 ネビルとエリックの間には、一般的な父子のような情愛や絆はない。そもそも一緒に生活していたことがあまりないようだ。それでもネビルはエリックのことを彼なりに愛している。その愛は一方的かつ利己的でエリックを自分の所有物のように扱うものでもあるのだが。変わっていく息子の前で狼狽しいらつくネビルの姿は、滑稽でもあるがどこか物悲しくもある。そんな彼が最後に見せる底力が深く記憶に残る。