宮内悠介著
ヨハネスブルグに住む戦災孤児スティーブは、スラム化した高層ビルの上から何年も繰り返し落下し続ける人型ホビーロボットの1体が自分たちを認識していると気づき、捕獲しようとする。NY、ジャララバード、ハドラマウト、東京の5つの都市の荒廃と人の在り方を描く連作短篇集。歌う少女型ロボットが各話を繋ぐ短篇集。描かれる近未来の世界は、戦争や内戦、テロにより荒廃しており、人類は斜陽を迎えている。最終話「北東京の子供たち」では、大人たちは仮想の世界に逃げ込んでいる、あるいは別の世界を見ようと模索しているようでもある。そういう世界の中で生きるしかない、という諦念が作品の底辺に流れているが、これがすごく「今」な感じがする。紛争が続き人類の発展は尻すぼみな世界は、現実の現代に繋がっているのだ。最早SFで希望に満ちた未来というのは描きにくくなっている、あるいは描いても説得力がないのだろう。ただ、本作から過度にペシミスティックという印象は受けなかった。むしろ、そこからどう生きるか、たとえ人間・民族としての形態を変えても、というような先細りではあってもしぶとさも感じさせる。前作『盤上の夜』から小説として格段に冴えていて(『盤上の夜』もよかったが)直木賞ノミネートも納得。