仕事も恋愛も周囲に流されがちだった梅宮志乃(多部未華子)は同僚との浮気がばれて恋人の正樹(柄本佑)にふられ、退職することに。心機一転を図り引っ越して新しいバイトを始めるが、バイト先の店長で偶然アパートの隣室の住人だった菅原京志郎(綾野剛)に恋してしまう。しかし京志郎には同棲中の恋人・あかり(光宗薫)がいた。原作はジョージ朝倉の同名漫画。監督は田口トモロヲ。
 特に前半、志乃のモノローグが多くてちょっと辟易とした。多分、原作通りのセリフやモノローグなんだろうけど、漫画としてぐっとくる言葉の使い方と、映画としてぐっとくる言葉の使い方とは違うんだろうな。そのまま持ってきても上手く機能しないのだろう。だったら、もっと大胆にアレンジしてよと思ってしまう。ただ、後半ではそれほど気にならなかった(シチュエーションや登場人物の立ち居振る舞いについてはこれは漫画だから成立するやつだよな、とか思ったけど)。志乃が自分内でぐるぐるしていたものを相手にぶつけていくようになるので、モノローグとして処理される言葉が減ったということもあるかもしれない。
 志乃は決して万人受けするようなヒロインではないだろう。そこそこモテて付き合う相手が途切れない、と言っても本人にすごい魅力があってモテるのではなく、さびしいから手近な相手で手を打ってしまう、相手にとっても、これなら自分でもイケるんじゃないか、というお手軽さからちょっかいだされがちという、微妙にありがたくないモテ方なんじゃないだろうか。こういう流されやすい、フラフラした女性を多部が演じるというのは意外なキャスティングだったが、逆に多部くらい個性がしっかりした俳優じゃないと、存在感が出なかったかもしれない。いわゆるモデルのような典型的な美人が演じたら、嘘くさいかいたたまれなくなるかどちらかだったんじゃないかな。そういう意味では結構ギリギリの人選だと思う。
 田口監督の作品は、主人公の自己愛が強すぎるように感じられる部分があったのだが、本作はこの部分はあまり鼻につかなかった。志乃のキャラクター性もあるだろうし、主人公が女性ということで、監督との間にちょっと距離感が出来たのかなと思う。映画としては色々難があるし、決して自分が好きなタイプの話ではないんだが、それでもそこそこ楽しんだのは、俳優の力によるところが大きい。綾野剛の嘘くさい笑顔と甘える態度のウザさ(これは、ウザく甘えるというシチュエーションだったので演技としては正しいんだろう)には、これに一目ボレできるか?!とは思ったが。あと、自分の地元がちょいちょい出てきてびっくりした。