ミッチ・カリン著、駒月雅子訳
探偵業を引退し、サセックスで養蜂を営むシャーロック・ホームズは、養蜂の手伝いをしていた少年・ロジャーが死亡しているのを発見した。なぜ少年は死んだのか、考えを巡らせるが思いは過去へと漂う。ベイカー街時代の手記や手紙、そして少年が持っていたミツバチの標本。過去の2つの事件、そして現在の事件から晩年のホームズを描くパスティーシュ。3つの時代を行ったり来たりする少々読みにくい構造なのだが、過去の2つの事件を持ち出す必要があまりなかったんじゃないかなという気もした。小説として、過去と現在を絡ませる構造がこなれていなくてぎこちないのだ。無理しなくてもいいよ、と思ってしまった。しかし、ちょっと痴呆も始まった探偵の一人称視点の世界の描き方には興味を引かれた。体は動かなくなり、一つのことに集中するのが難しく、思考は散漫になっていく。思考に特化した名探偵であるホームズにとってこの変化は辛いのではないかと思ったが、そこまでではなさそうな所も、加齢による変化を思わせる。本作のホームズはちょっとロマンチストなんじゃないかなと言う気がしたが、それも年齢を重ねたからか。なお、過去の事件として、ホームズが第二次大戦直後の日本を訪れるエピソードがある。なんで日本を選んだのかなー。そんなに必要性を感じないので、著者の趣味なのかな。