アパートの一室。レコードを選び、サンプリングしリリックを書き留める青年たち。ヒップホップアーティストのOMSB、Bimたちの2日間にわたる作品作りを追ったドキュメンタリー。監督は三宅唱。
 サンプラーと向かう固定カメラのフレームは、部屋の間口とほぼ一致している。作業をする人たち(とブラブラしている人たち)をただ映しているだけなのにすごく面白いしわくわくする。私はヒップホップには疎いので、トラックって(少なくとも本作に出演したアーティストたちは)こういうふうに作るのか!という新鮮さを感じた。また、作業をしている人が集中している背後で、全然関係ない話をだべっている人たちがいる、場の緊張感とゆるさの入り混じっている、でも不調和ではない感じが心地いい。何かに楽しそうに熱中している人を見るのは、やはり楽しいし何か元気が出てくるのだ。リズムを打ち込むうちにだんだんどツボにはまっていく様を見ていると、その場にいるみたいにあー惜しい!とか思っちゃう。
 カメラは基本正面からの固定で、たまに作業している人の横に移動したり、近くに寄ったりする。しかし基本的に絵の枠は限定されている。にもかかわらずすごく動きを感じるし、絵の中に空間・時間的な広さを感じる。これはすごいなぁ。この撮り方が正解だ!という確信が伝わってくるし、実際大正解。どう撮るか、どこを使うか、どことどこをつなげるか、という判断が非常に的確だと思う。その選択によって「映画」としての凄みが生まれているように思った。
 最後、音の断片が集約されて音楽が立ち上がってくるのだが、流れる風景と重なりカタルシスになる。自分でもちょっと意外なくらい面白かったし気分良くなった。被写体となったアーティストたちにしろ監督にしろ、真剣にやっているけど遊戯性が常にあるところがいいのだろう。快作。