ネレ・ノイハウス著、酒寄進一訳
警察署に復帰した刑事ピアは、女性の変死事件を担当する。投身自殺のように見えたが、動物の安楽死用の薬物による他殺だということが判明した。奇しくも女性の夫は獣医で、夫婦仲は険悪。加えて夫が経営する動物病院の共同経営者夫婦や乗馬クラブの会員、管理者、オーナーその他諸々、動機のある関係者が次々と現れる。そして殺人の背後には更に深い闇が隠されていた。『深い疵』『白雪姫には死んでもらう』が日本でもヒットした、刑事オリヴァー&ピアシリーズの1作目。ようやく邦訳された。やはり1作目だからか、後の作品に比べると少々とっちらかってだらだら続くという印象を受けるが、これは容疑者をやたらと出してかく乱するというミステリの手法を取っているからというのも一因か。ピアにしろオリヴァーにしろ、まだキャラクターが固まりきっていない感じもするが、2人の関係にいわゆるロマンスが持ち込まれず、あくまで仕事上のパートナーであるというところは1作目から一貫しているようだ。本作、被害者の憎まれっぷり、嫌な人間っぷりが、生前の姿は一度も描かれない(関係者の話の中で「こういう人だった」と言われるのみ)にも関わらず見事だった。あーこれは厄介な人だな!という説得力がある。悪い人じゃないけど厄介、というのではなく積極的に悪意のある人なのだ。そして彼女の関係者ももれなく色と欲にまみれている。嫌な人ばかり出てくるというところが却って清々しい。