特集上映「ハント・ザ・ワールド ハーバード大学感覚民族誌学ラボ傑作選」にて鑑賞。監督はヴェレナ・パラヴェル&J.P.ツニァデツキ。NYメッツの新しい球場「シティ・フィールド」の周囲には、ジャンクヤードと呼ばれる地域が広がっている。主に移民が営業している自動車のパーツ屋、廃品店、修理工場が軒を連ねているのだ。再開発が進み、やがて取り壊されるであろう町の姿を記録した作品。
 たまたま時間があったから見てみたのだが、なかなか面白かった。おそらく製作の意図は、文化人類学的な記録としてのフィールドワークであってドラマとして編集しているわけではないんだろうけど、あまりに映画的としか言いようのない瞬間があるのだ。小銭をせびって歩き回る老女の動きのリズミカルさと妙にフォトジェニックな面持ちは、映画として撮られるために来ましたってな感じだし、ヤンキー風カップルに起こった事件も、会話の中で事情がわかるだけだけど、これだけで一本の映画になりそうだ。あれっ、この人たち本当に愛し合ってたんだ、と意外に思ったくらい。
 地元の人たちの話の中では、この地域は再開発でつぶされる、人が徐々に立ち去ってゴーストタウンみたいだ、等という話も出てくる。しかし人々の暮らしはそれなりに続いている様子がうかがえるし、あんまり悲壮感もない。それはそれとして日々の生活をこなし、それなりに楽しんでいるというたくましさみたいなものが垣間見えた。