ジミー・コンロン(リーアム・ニーソン)は、ブルックリンを縄張りとするマフィア、ショーン・マグワイア(エド・ハリス)の元で働く殺し屋だった。現役引退し、罪悪感の為に酒びたりの日々を過ごすジミーだったが、犯罪に巻き込まれ殺されそうになった息子マイク(ジョエル・キナマン)を助ける為に、襲ってきた男を殺してしまう。その男はショーンの息子ダニー(ボイド・ホルブルック)だった。ショーンは復讐の為にジミーとマイクに追手をかける。監督はジャウム・コレット=セラ。
 いつものリーアム・ニーソン主演のアクション映画かなと思っていたし、実際そうではあるのだが、妙に陰影が深い。脚本のブラッド・インゲルスビーは『ファーナス 決別の朝』を手がけた人で、だとするとこの陰影の深さも頷ける。あるシーンがまんま『ファーナス~』のクライマックスと同じシチュエーションだったのだが、こういう絵が好きなのかな。インゲルスビーは、間違っているかもしれないがこうやるほかない、という人のドラマが好きなんだろうか。
 この人はこういう人、という見せ方がくどくなく端的で、手際がいい。ジミーがバーで酔っぱらっているあたりから、パーティーでサンタ役をする羽目になるあたりで、彼が自滅的になっており自尊心もなくしかけていることが伝わる。また、マイクがボクシングジムで少年を指導する様を見るだけで、この人は(ジミーとは対称的に)ちゃんとした人なんだなとわかる。
 本作の陰影をより深めているのは、ジミーとショーンの関係だ。2人は長年の親友であり、ジミーはショーンの為に殺しを続けてきた。酒びたりになったジミーを、ショーンだけは軽んじない。2人は「一線を越える時は一緒だ」と言うが、この言葉が2度目に言われる時にはその意味合いが変わってくる。その変化が痛切だった。どちらにしろ一緒ではあるのだが、一緒だと言うこと自体がやりきれない。
 2人の関係の変化が、どちら側からも息子との関係によるものだというところが面白い。ジミーは仕事の為に家族と距離を置き続け、マイクにとっては自分たちを捨てた父親だ。親子関係は少なくともマイク側からは崩壊しているのだが、ジミーは父親として、マイクの為に一線を越える。一方ショーンの息子ダニーはドラ息子であり、ショーンも息子の才覚は見限っているようだ。しかし出来の悪い息子であっても、息子は息子で、愛情を否定できない。ショーンもまた、息子の為に一線を越えるのだ。ただ、ジミーは息子との関係を取り戻すべく行動するが、ショーンは息子との関係をもはやどうすることもできない。そこがまた苦い。