田舎町でラジオ局のDJをやっているイグ(ダニエル・ラドクリフ)は、恋人のメリン(ジュノー・テンプル)が他殺死体で発見されたことで、容疑者にされてしまう。町中が彼を犯人だと信じる中、彼の額から角が生えてくる。その角の前では、人は欲望をあらわにし嘘がつけないようなのだ。イグは角の能力を使って真犯人捜しを始める。原作はジョー・ヒルの同名小説。監督はアレクサンドル・アジャ。
 特殊能力を持った探偵役が特殊ルール下における犯人当てをするミステリかと思っていたら、どんどん変な方向に転がっていく。いや、変な方向に転がるというよりも、色々なジャンル要素が次々に注入されて変なことになっていると言った方がいいのか。イグに角が生えているのに周囲があんまりリアクションしないのも見ていて奇妙な感じなんだけど・・・。
 ベースは青春物語といってもいいのだが、そこにミステリ、サスペンスをはじめホラーやらオカルトやら見ようによってはコメディやらをどんどん載せていくので、相当奇妙な味わいになっている。それでいてしっかり切ない。イグはこの町で生まれ育ち、幼馴染のグループでいつもつるんでいたが、そのうち1人は警官になっておりイグと敵対する。弁護士となった親友も、イグの無実を信じているとは言い難い。イグは少々思い込みの強い性格として描かれており、イグが見ていた風景と友人が見ていた風景は違うかもしれないし、最愛のメリンですら、イグと同じものを見ていたのかどうか、イグ本人にも、映画を見ている側にもだんだんわからなくなっていく。では実際、誰が何を見ていたのか、真実に辿りつく過程がイコール、子供の頃からの人間関係の行きつく先でもある。いわゆる少年時代の終焉を描いたような物語なのだ。
 小さな町の中のみ、更に限られた人間関係の中でのみ話が展開される、少々閉鎖性の高い物語だ。その閉鎖性は、イグとメリンの関係が(少なくともイグにとっては)非常に緊密で外部がわかりにくいというところに呼応しているようにも思った。イグがもうちょっと周囲を見ていれば、また違った物語があったかもしれない。