湯本香樹実著
瑞希が白玉を作っていると、3年前に失踪した夫・優介がふいに現れた。優介の体は既に海の底で朽ちたと言う。その後、帰ってくるのに時間がかかったというのだ。瑞希は優介とともに、彼が死後にたどった道筋を逆にたどる旅に出る。死んだものが戻ってくることにすっと馴染む瑞希も、やはり死の傍、生と死の際にいるのだと思う。おそらく優介がいなくなってからの3年間、彼女は生きているけど生きていないというような、宙ぶらりんの状態だったのだろう。一見、死者である優介に瑞希がひっぱられているように見えるが、実は瑞希に優介がひっぱられ、双方が生と死の際で再会しているのだ。優介との旅はその際を辿り続けることであり、お互いがあるべき場所にまた戻る為のもの、長いお別れの儀式なのだ。常に霧がまとわりついているような、薄暗い雰囲気がひたひたと満ちている。