ジョージ・オーウェル著、新庄哲夫訳
核戦争後、3つの大国によって統治されるようになった1984年の世界。真理省の役人・ウィンストンは、過去の記録の改竄作業を行っていた。彼が暮らす国オセアニアでは文字通り歴史記録が日々書き換えられ、皆、本当は過去がどんなふうだったか、忘れつつあった。ウィンストンは自分の考えを綴るという禁止された行為に手を染めるようになり、体制への疑いを深めていく。彼は監視をすりぬけ若い女性ジューリアと愛し合うようになる。今は新訳(高橋和久訳、2009年)も出ている本作だが、手元にあった旧訳版(1972年)で読んだ。さすがに文章が古くて読み進めにくいところはあるし、全体主義を感じさせる世界設定の古さは否めないが、書かれていることはむしろ今、というよりもどの時代にも普遍的なものだ。言葉を、記憶を、思考を制限することが支配することである、という部分には嫌な手ごたえがある。そして、制限されることがされる側にとって楽になってしまう。大きな声に従って何も考えない方が簡単で、人間は簡単な方に流されがちだし、それほど強くはない。それでも複雑さ、多様さに耐えること、考えることをやめないことが「自由」である為には必要なのだと思う。