デニス・ルヘイン著、加賀山卓朗訳
バーテンダーのボブは、ごみ容器に捨てられていた子犬を拾う。近くのアパートに住むナディアの助けを得て子犬を飼い始めたボブは、新しい人生を踏み出したように感じる。しかし勤め先のバーに強盗が入り、裏社会絡みの厄介事に巻き込まれていく。映画化された作品だそうだが、日本公開はされないのかなー。後半で景色ががらりと変わって見える。ボブが生まれ変わろうとするし、それは成功したようにも見えるが、最後まで読むと、実は本来の自分を受け入れ、生まれ変わるのを諦めたのではないか、長い「猶予」が終わっただけというようにも思える。一見清々しいが、その背後には深い諦念があるのではないか。ボブの孤独や何者でもなさ、何も持たなさが実に身にしみる。