稲泉連著
2011年3月11日の東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の書店は391店。3県の書店数のほぼ9割だった。そんな中、仙台の一部の書店はいち早く、3月22日に営業を再開する。流通は止まり、新商品は入ってこないし損害を受けた商品も多々ある。しかし営業を再開すると、予想外の集客だったと言う。そしてそれは、仙台に限ったことではなかった。震災後、各地の書店がなぜ営業再開を決意し、どのように軌道に乗せていったのか、大宅賞である著者が取材した。震災時の本にまつわる話題というと、「あの少年ジャンプ」をまず思い出すのだが、本作に書かれているのも同じようなことだと思う。災害時、まずは体の安全と健康、そして衣食住の確保が大事というのは当然だし、まずそこに意識がいく。ただ、人はパンのみにて生くる者にあらずというか、プラスアルファのものがどうしても欲しくなるし、必要なのだろう。売れたのは実用書や地図等だけではなく、パズルやゲームの本、娯楽小説等幅広かったそうだ。そこに本屋があることがありがたいというか、日常へと引き戻す役割もあったのだろう(この気持ちはすごくよくわかる)。人間がかなり切迫した状況でもそういうものを欲するということ、普段は意識しないが、本を必要とする人、また本を届けようとする人がいることにぐっとくる。ただ、地方で「町の本屋」を経営することの難しさにも随所で触れられている。実際、後日談的に登場する書店のその後に言及されているが、この先どうなるんだろうという不安は濃くなっているように思った。書店好きとしては各町に小さな書店があってほしいけど・・・。